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おしゃべりな毎日

フリーライター木村嘉代子のブログです。日々感じたことを綴っています。Copyright(C)2005-2023 Kayoko Kimura   

ポーランド女性から聞いた冷戦終結から7年の東欧の国

1997年ごろ、パリで会ったポーランド人女性にインタビューしたときの記事です。

民主化したものの、冷戦時代を知らない若者たちは、貧富の差など資本主義社会の抱える問題に不満をもっている。

そう語っていました。



彼女が、フランス語を学ぶためにパリへやって来たのは3年前。

一度は故国へ戻るが、パリでの“運命的な出会い”がきっかけで、再びパリへ。
アイルランド人の恋人と暮らしながら、大学で知的障害児教育学を専攻している。

「あこがれの都パリでの生活は、想像していたものと少し違っていました。日常生活の速度がとても早く、競争の毎日。することがたくさんありすぎで、時間の余裕がない人々。組織の中に抑圧された機械みたい。大都市では、当然なことなのかもしれないけれど…」

共産圏だったポーランドが民主化されたのは、1990年代初めのこと。

民間企業が次々に進出・設立し、ポーランドにも競争社会が浸透しはじめている。

「仕事と家を往復する静かな生活は、過去のものになりつつあります。ポーランドは今、初めの一歩を踏み出したばかり。この急激な変化に否定的な人も少なくありません。政治に興味がなく、工場で静かに働き、安定した社会保障を得たいと思っている人は、『何てことになったんだ、共産主義の方がいいじゃないか』と不満を持っています」

1995年の大統領選挙では、18才前後の若者たちが共産党を支持し、注目を集めた。

民主化される前の時代を知らない若者が、インフレや貧富の差など資本主義の抱える問題に不安を抱いている表れなのかもしれない。

「以前のシステムは、個人のパーソナリティを無視したもの。私と同世代や少し上の世代のほとんどの人たちは、民主主義への変化に賛成しているのです」

彼女たちは、ポーランドの将来を担っていく世代ともいえる。

教育が自由選択へと変わり、外国で何かを学ぼうと、パリやロンドンで勉強する若いポーランド人の増加が著しい。

2002年にはECへの加盟が認められる予定で、ポーランド発展の期待が盛り上がっている。

しかし、海外での生活は、楽しいことばかりではないのが現実だ。

「EC諸国ではない東欧人にとって、ビザの関係などでフランスの滞在はなかなか困難。将来、パリで働くかどうかは、まだわかりません。子供のカウンセラーとしてフランスの公共機関で働くには、フランスの国籍が必要ですし…。仕事ができるのなら、他の職業でもかまいません。外国人のためのフランス語教師になろうかとも思っているところです」

パリの街並みとかわいい小さな通りは好きだが、パリジャンの閉鎖的な性格が嫌いだという彼女。

ポーランド人は“開放的で、親しみやすく、親切"。この評価は、彼女の人柄そのものを表現しているかのようだ。素朴な笑顔の合間に見せる力強い印象は、社会の変動を直視し、自由と独立の尊さを肌で学んだことからくるのだろう。

最高のパートナーと“人生を分かち合い”ながらも、一個の人間として自分をしっかり見つめている。



彼女の生活状況はその後かなり変わってしまったけれど、今でも逞しくパリで暮らしているはずです。


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by k_nikoniko | 2007-06-12 21:16 | ー海外の若者