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おしゃべりな毎日

フリーライター木村嘉代子のブログです。日々感じたことを綴っています。Copyright(C)2005-2023 Kayoko Kimura   

フランスでデモを抑制する破壊活動防止法の制定か?

フランスで制定されそうな破壊活動防止法について、マクロンに近い弁護士のインタビューの抄訳が届いたので、アップしました。
2019年2月4日、ルモンド紙電子版に掲載されています。

この法案の目的は、破壊活動を行った者の処罰ではない。デモをする権利を行政が制限するために制定されるのである。自由を大切に思う人間は、この法を認めることが出来ない。

破壊活動をすると思われる人間のデモ参加をこの法は事前に禁じる。誰が禁止を決めるのか。一般的にデモは政府を批判するために行われる。その政府がデモ禁止を決めるのである。

根源的自由が失われた。この法が拡大解釈されない保証はない。まちがいなく、将来拡張されるだろう。防波堤はすでに壊されたのだ。これからはすべてが可能になる。

恐ろしいのは、警察は自主的に考えるのではないという事実に誰も気づかない点だ。政府が言う通りに警察は考えるのである。今日は「黄色いベスト」が悪いと考える。だが将来、極右政権が成立すれば、マクロン派、ジュペ派、社会党が悪いと考えるだろう。その時、しまったと思っても、もう遅い。

デモの制限は、自由な社会そのものに対する挑戦だ。反テロ法が制定されたとき、市民の自由を制限する自由を政府に与えれば、どんな政府でも無制限に自由を踏みにじるだろうと我々は警告した。いつか市民全員の根源的自由を攻撃するだろうと言った。今、その時が来た。

通常の刑法で完全に処罰できるのに、破壊者抑圧の口実の下に「黄色いベスト」を狙っている。暴力ではなく、デモを制限しようとしているのだ。犯罪者ではなく、市民を恫喝しているのだ。

混乱が起きうる可能性があるというだけでデモの権利を判断してはならない。それでは団結権も報道の自由も制限できてしまう。犯罪は処罰されなければならない。だが、自由の行使を禁ずるなら、民主主義は失われる。デモを犯罪だと判断するのは誰か。政府の横暴を制限する目的でデモの自由が行使される。その自由を政府は抑圧しようと言うのだ。

政府は警察の人質になったような感がある。警察の側に100パーセント立つと内務大臣クリストフ・カスタネールがいみじくも発言したが、そこに真理が表れている。大臣は警察を指揮し、必要ならば、その行動を制限するのが仕事であり、警察に追従するのではないと私たちは素朴に信じていた。だが、現実はまったく違っていた。政府は警察に従っている。国会も政府も警察の召使いになった。

暴力行為が生じても、大多数のフランス市民はデモを支持すると世論調査が示している。それは、パニックの最中で制定される法律によって共和制が脅かされていると大多数のフランス人が感じているからではないか。

民衆をデモに駆り立てている正体不明の何かがある。暴力行為にも関わらず、その何かを尊重しなければならないと大多数のフランス人が感じているのだと私は思う。なぜなら、それは民主主義に関わる何かだからだ。この何かを政府は消そうとしている。自分たちに都合が良いからだ。だが、政府のために民主主義があるのではない。

自分たちに都合の良いデモ、警察が認めるデモだけを許したいと権力は望む。おそらくいつか、危険のない意見、法案が言うところの「正しい行動」と認められたデモだけに与えられる許可を申請しなくてはデモできない日が来るだろう。だが、それは紛れなく、民衆蜂起が起きる時である。

デモの権利を擁護するためにこそ、この法律を制定するのだという内務大臣は、この危険に気づいていると思う。政府が死刑を復活する時が来れば、「被害者の権利擁護のために生命を守る」目的で死刑を復活すると大臣が言うのはまちがいない。


by k_nikoniko | 2019-02-05 11:12 | フランス