フリーライター木村嘉代子のブログです。日々感じたことを綴っています。Copyright(C)2005-2018 Kayoko Kimura
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フランスのオルタナティブ・メディア

2010年10月30日~11月1日の3日間、フランスの市民団体(RECIT:市民教育ネットワーク)主催の第4回国際会議に参加し、オルタナティブ・メディアのワークショップ(3回)と報道番組を解読するメディアリテラシーのワークショップ(1回)を受講しました。

オルタナティブ・メディアのワークショップ
「私たちが必要なメディアとは? 市民メディアをどう支えるか? ジャーナリストと市民とで情報をどのように協働構築すべきか?」
講師は、Altermondeのダヴィッド・エロワ編集長と、青少年向け持続可能な開発教育サイトG-grainのKiagi編集長フローラン・デプュイ氏。
受講者は3名(グルノーブル在住の若い女性、ナンシー在住のモロッコ女性、私)だけでしたが…。

1回目は、「どのメディアから情報を得ているか」について、受講者と講師がいろいろメディアをあげていきました。
XXI、Rue89、ルモンド・ディプロマティック、クーリエ、メディアパール、ポリティスなど、既存メディア以外のメディアが多数出てきました。
そして、講師が「大手マスメディアの後退と新メディアの躍進」について解説。フランス人のメディアに対する不信、総合紙・誌ではなく、専門分野(環境や人権、国際問題、経済など)に的を絞った新雑誌が売れているという話でした。
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2回目は、「持続可能な開発教育サイトKiagi」の説明と、AltermondeおよびG-grain(Kiagi)の運営や資金源などについて。いずれもアソシアシオン(市民団体)のため、助成金を資金源としていること、有給スタッフやボランティアについての話がありました。

3回目は、メディアの役割について。

メディアリテラシー「テレビ報道分析」
講師は、RECIT代表のディディエ・ミノ氏他
30分間、F2のニュース番組を観て、参加者が感想・意見を述べて議論。
ニュース内容は、「年金問題の抗議デモ(かなり長かった)」「ハイチの洪水」「乳がん」など。
議論で出た意見としては、「組合員に直接インタビューしていない」「コメンテーターが説明するだけ」(年金)、「フランス人のジャーナリストだけが登場」(ハイチ)、「考える時間を与えない」など。
RECIT発行の「テレビ報道分析」(2008年)では、「37分間に24のテーマを取り上げ、分析がない」「感情に訴えるような話しぶり」「人々の暮らし、社会運動、情報を天気予報と同じ手法で紹介している」などの問題点を指摘しています。

メディアのワークショップに参加して、最近のフランスメディアについて、驚いた点と気づいた点

新雑誌が売れている : 良質の新メディアは知名度も高く、一般読者から支持されている
新聞の宅配制度が一般的ではないフランスでは、惰性で新聞をとる人は少なく、新聞離れは著しい。知り合いのフランス人たちも、新聞の内容はネットでチェックする程度だった。
これまで一般紙や総合誌を読んでいたフランス人は、さほど抵抗なく新メディアへと移行しているのかもしれない。
テレビも、24時間報道番組のチャンネルがいくつかあり、そちらへシフトしている。
ラジオに関しては、ニュースや文化といった専門分野の放送の聴者は横ばいとのこと。
日本でも、新聞代4000円を他のメディアに使ってくれたら、良いものができるのに…と思いました。
マスコミを批判しながらも、なぜ日本人は行動を変えないのか、が疑問です。



売れている雑誌の傾向 : 一般情報ではなく、専門を絞った切り口
リベラシオンやルモンドなど、情報全般を扱う一般紙・誌は売れない。環境問題や連帯経済、国際問題、移民などマイノリティなど、専門を絞ったメディアが伸びている。
より正確な情報、自分の興味のある情報を、人々は求めているから。
単なるカルチャー誌ではなく、オピニオン誌が売れている点が注目に値する。

ジャーナリストが独立して起業 : 大メディアに見切りをつけ、新メディアに挑戦
Rue89とXXIは、元大手新聞ジャーナリストが自ら出資して設立した。フランスでは、大メディアの専属を辞め、独立するジャーナリストが増加しているよう。
Rue89の発行人アスキ氏は、「リベラシオン紙を辞めたことは全く後悔していない。新しいものを創るほうがずっと面白い。リベラシオンのような大組織では、ものごとを変えるのはとても難しい。Rue89は組織が小さく、やりたいことがあればすぐにできる。資金不足といった困難はあるが、多くの可能性にあふれ、前進していくことができる」と語った。
XXIのサン=テグジュペリ編集長も、「マスコミの時代は終わった」と発言している。
アスキ氏とサン=テグジュペリ氏の話しを聞き、たとえ失敗しても挑戦する、という気概にジャーナリスト精神を感じた。
フランスは、大メディアに就職するというより、有給契約という形(他紙に移ることも珍しくない)なので、社員ではなく、ジャーナリストとしての意識が高いのだと思う。

メディア教育の重要性 : 新メディアを支援する市民
新メディアの読者を獲得するには、メディア教育が欠かせないと感じた。取材した3つのメディアが、市民およびジャーナリスト、学生向けにメディア教育を行っていた。
Altermondeのエロワ編集長は、「市民が抱えている問題をジャーナリスティックに書くための教育を行っている。一般の人たちに、記事がどのように書かれているか説明し、インタビューやルポを体験してもらい、記事の書き方を学ぶといった教育。メディア理論ではなく、実践的な教育。優れた取材や調査は誰でもできる。一般の人がメディアを学び、その役割を共有すべきだと思う。そのためには、メディア教育が必要」と語っていた。


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by k_nikoniko | 2013-11-13 08:30 | メディア
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