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北海道新聞社のセクハラ事件

北海道新聞函館支社で起きたセクハラ事件に関して、2015年12月9日に『The Japan Times』に掲載された記事です。

Sexual harassment at bōnenkai, inept handling, a suicide
忘年会でのセクハラ、不適切な対応、自殺
職場での女性の権利が守られていないという日本の現実を示す事件

忘年会シーズンがやってきた。多くの労働者にとって、年末の飲み会シーズンは、羽を伸ばし、過ぎ去った12か月のあれこれを喜んだり憐れんだりする歓迎すべき時期である。しかし、一部の女性たちにとっては、酒の勢いで羽目を外し、酔っぱらった男性たちに囲まれ、セクハラが増える恐れがあり、悩ましい時期でもある。

昨年(訳注:2014年)12月8日の『北海道新聞』(以下、『道新』)函館支社の総務グループの忘年会で、40歳の同社嘱託看護師の女性が、営業部総務担当次長と同部員からセクハラを受けたという。2か月後の2月21日未明、その女性は自宅の火災による一酸化炭素中毒で亡くなった。彼女は亡くなる前日、『道新』の無神経で冷淡な対応を批判する告発資料を、北海道内の新聞およびテレビ局8社を含む13の機関に郵送していた。

焼け残った彼女の自宅の物置からは、「葬式はやらないで下さい」とだけ記した手書きのメモが見つかった。女性の遺族は、セクハラと会社の不適切な対応が原因で娘が自殺したと信じて疑わない。



遺族は5月に社員2人を、北海道迷惑行為防止条例違反と暴行罪で刑事告訴した。遺族は女性の死後すぐに、『道新』にセクハラがあったかどうか調査するよう求めていたが、『道新』から家族に回答があったのは6月26日だった。結果は、「セクハラの事実は認められなかった」というものだった。

告発資料によると、既婚者の次長は、女性の体を触り、卑猥な発言をしたという。部員もまた既婚者であり、たとえば、「愛人になっちゃえば」といった言葉によるセクハラをしたそうだ。

研究によると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)はセクハラ体験と関係するという。亡くなるまでの数か月間、女性は12月8日の出来事の深刻なトラウマに悩まされていた。事件後に彼女は心療内科を受診しており、彼女もPTSDだった可能性がある。

女性が勇気をふりしぼって『道新』本社のハラスメント相談窓口に電話をしたのは、忘年会から10日後のことだ。被害者の女性は、会社の手続きに従えば、自分の訴えが正当に扱われると期待していた。つまり、加害者といわれている社員が罰せられるだろう、と。1月8日、被害者の女性と加害者といわれる社員2人からの聴取が行われ、その後、ハラスメント担当者たちは、セクハラの信憑性が高いと結論づけた。

1月23日、函館市のホテルで面談が設定され、社員2人は口頭で彼女に謝罪し、謝罪文を手渡した。この面談を被害者の女性はスマートフォンで録音していた。加害者といわれる社員は、飲み過ぎて理性を失ったと説明しており、女性は、「許しません」とはっきり答えている。

謝罪後に会社は彼女に、これまでは6か月ごとに契約を更新していたが、今後は契約更新の手続きなしで嘱託社員として働いていただく、と申し出た。録音から、彼女がクビにならなかったことにホッとし、喜んでいるのがわかる。

この時点で、会社は問題が解決したと考えたらしい。しかし、被害者の女性は、満足していなかった。なぜなら、加害者といわれる社員の異動といった彼女の要求が認められなかったからだ。

2月5日、女性は、加害者といわれる社員1人と、札幌の本社で開かれる会議に出席するよう伝えられる。4時間以上にわたってその社員と同じ部屋にいる予定になっていた。ハラスメント相談窓口の担当者も同席することになっていた。

抑えていた感情が爆発した。女性は、亡くなる前に送った告発資料にそう書いている。会議について聞かされた後、女性は休みをとった。2月16日、女性は本社総務局長宛に、体調が悪いこと、会社の無神経な対応への不満を説明する手紙を送った。

手紙の返答は総務局次長から届き、それが自殺の引き金になった可能性がある。2月18日に届いた手紙には、「(社としては)一定程度の対応ができたと考えていた」とあり、「もう一度話し合いを」と繰り返す内容だった。

「話し合いにならない」と女性は2月20日に送った告発資料に書いている。「異動させず、そのことにより更に健康を害していると訴えているのに一体何をしたつもりなのでしょうか?」 そして翌朝、女性はこの世を去った。

女性は、告発資料で厳しく『道新』を批判していた。

「リスクマネジメント能力の著しい欠如が破滅を招くことすら分からない。そのくせ、新聞では庶民や弱者の味方のようなふりをする。道新に不正を追求する報道機関の資格はありません」

女性は新聞社を理想化して尊敬し、その期待が大きかっただけに、会社への失望も大きかったと思われる。

しかし、『道新』もまた、セクハラの対応に未熟な日本の多くの企業と同じ、男性優位の企業でしかない。

2006年改正・男女雇用機会均等法では、セクシュアルハラスメント防止に向けた新たな規定が加わった。この法に基づいた条項および指導指針に合わせ、事業主には職場でのセクハラ防止に向けた措置が義務づけられた。

大企業では、セクハラへの具体的対策がとられている。職場でのセクハラの詳細を明らかにし、就業規則に加害者の懲罰を明記し、セクハラ窓口を設置するといった対策だ。『道新』も同じである。

「法的枠組みが制定されても、日本では職場でのセクハラ防止策が実質的に機能していません」と指摘するのは、北海道ウイメンズ・ユニオンの小山洋子書記長だ。

民間企業は、この条項を法律というより指針として扱う。指針に違反しても、罰則はない。『道新』も例外ではない。今回のケースでは、「セクハラ窓口は利用されましたが、被害者に二次被害を与えた可能性もあります」と小山さんは言う。

企業はセクハラの相談を受ける担当者を任命することになっているが、その担当者は、被害者側ではなく、会社側の管理職である場合が多い。さらに、これらの担当者が、セクハラの経験や知識を十分持ち合わせているとは限らない。『道新』内部の情報によると、セクハラ担当者は、元記者だったということだ。

「ハラスメント窓口の存在は知っていますが…。実際に相談窓口を利用する人なんているのでしょうか」 『道新』のある女性記者は述べ、他にもそう言う女性がいた。

2014年7月1日の男女雇用機会均等法の改正で、セクハラに関する指針も変更された。被害者のメンタルケアの必要性が明記されたのだ。しかし、『道新』の今回のケースでは、精神的なストレスを軽減する適切な措置がとられていなかったようだ。

加害者といわれる社員を異動させる分離措置は問題解決につながったかもしれない。しかし、それどころか、被害者の分離措置の訴えは基本的に無視され、彼女は不安とストレスに苦しんでいた。

「非正規社員がセクハラ被害を受けると、多くの点で不利ですね」と言うのは、女性のための労働組合パープル・ユニオン執行委員長の佐藤香さんだ。佐藤さん自身、派遣社員として働いていたときにセクハラに遭い、日本初のセクハラ労災訴訟で勝訴した経験を持つ。「非正規社員は、契約更新を打ち切られるのを心配し、泣き寝入りするしかないのです」

総務省の調査結果によると、2014年の女性労働者2436万人のうち、56.7%が非正規労働者である。『道新』の正社員1408人(2015年5月現在)のうち、女性はたった178人で、そのほとんどが記者だ。他の部署の女性の多くは、非正規社員で働いている。

女性の社会進出は、経済成長を掲げるアベノミクスの大きな柱になっている。しかし、日本の職場における男女平等に向けた進展はいまのところほとんどその兆しがない。マスコミ業界にもいまだセクハラが存在している。「深刻に考えないようにしよう。それが報道機関で生き残る唯一の道だから」 これは、何年にもわたって、女性記者の間で繰り返し耳にする冷笑的なフレーズである。日本のセクハラは組織的および構造的な問題であり、多くの女性にとって、不幸な現実として存在している。

安倍首相が主張しているように、政府が真剣に「女性が輝く社会の実現」を目指すのであれば、職場へ進出する女性を増やすだけでは意味がない。政府は、男の論理で動いている職場で男性と同等の働く権利を手に入れるだけでなく、女性の人権を守る対策をもっと強化すべきである。
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by k_nikoniko | 2016-08-27 07:55 | 掲載記事(2011~)
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