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強制連行の真実を明らかに

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 アジア太平洋戦争時、日本政府や軍の命令で、多くの朝鮮人が労務や軍務などに動員された。これまでの調査や研究によると、炭鉱や軍需工場、軍事基地建設に動員された労働者は70万人以上、軍人軍属は30万人以上とみられる。
「生存者に話を聞くと、日本語がわからないまま、何の説明も受けずに連れて行かれた、というのが圧倒的です。募集だから本人の意思、といいますが、その内容は騙しです。甘言による動員は違法なのですよ」 そう語るのは、強制動員真相究明ネットワークの事務局長・小林久公さんだ。
 こうした実態を究明するために、2004年、韓国で強制動員関係の特別法が成立し、政府内に真相を究明する委員会が設立された。それに呼応し、全国各地で活動していた人たちが、韓国と連携しようと発足したのが、強制動員真相究明ネットワークだ。
 韓国の委員会は、申告者の被害認定を行っている。その際に必要な資料や名簿のほとんどは日本側にあるため、「真相究明ネットワーク」は情報収集を手助けしてきた。これまで、企業が所持する朝鮮人労働者の賃金名簿や自治体が保管している埋火葬許可証などを探し出し、韓国の委員会に提供した。
 強制連行の重要な証拠のひとつが、給与や厚生年金などの名簿だ。金融機関に勤めていた小林さんは、“仕事で培った勘”を頼りに、名簿探しに奔走する。
「業務経験が功を奏していますね。どこにどんな台帳があって、それが行政にどういう風に集められるか、職業上の常識として知っていますから」
 ここ数年は、未払いになっている賃金の行方を追っている。朝鮮人労働者には一般的に給料は支払われていたが、そのほとんどを郵便貯金に回され、本人たちにはおこずかい程度しか渡されなかった。終戦後、貯金通帳は会社などが預かったままで、朝鮮人労働者の多くは賃金を手にしないまま帰国した。
「昭和22年に政府は、『郵便貯金通帳は指示があるまで会社で保管』と通達しました。その指示の文書が見つかったのは、つい3年前です。それまで、『こういう処理をしました』と政府は一度も説明していません。本来それは個人財産。本人たちに通知、または渡されるべきものです」
 全国から集まった朝鮮人労働者の貯金通帳は、福岡の郵便貯金センターにあるのはわかった。追跡は現在も続行中だ。保管している通帳のリストを韓国に提出するよう要求したが、まだ行われていない。
 これらの公文書は、事実認定には欠かせない貴重な資料だ。強制動員問題の解決のカギは、日本政府と日本企業の情報公開にかかっている。しかし、日本側はそれを拒みつづける。韓国の申請者25万人に対し、被害認定できたのは3割程度でしかない。「韓国側は、全体の人数さえ把握できないのです。それを知るには、日本が権限のある調査を行わなくてはなりません」と小林さんは言う。
「研究論文や資料も含め、政府に突きつけて認めさせるべきなのですが、強制労働の調査を担当するセクションがないのです。韓国側と協議するときは、関係省庁から出てくるわけですよ。外務省、過去に動員を担当した厚生省、未払い金を担当した労働省、地方自治体を管轄している総務省、以前は郵政省も。でも、それを一本にまとめるところがありません。」
 小林さんたちは、過去の問題を専門に調査する部署創設も求めている。「国会図書館内に調査室を設置できるよう、図書館法の改正案を以前から超党派で提出しているのですが、宙に浮いたままです。鳩山さんが会長だったので、本人が首相になったときに当然実現するだろうと期待したのですが…」
 韓国側が政府機関であるのに対し、日本には相応するものが存在しない。「真相究明ネットワーク」は市民団体だ。小林さんは、「市民としては一生懸命やったが、反省点もある」と認める。「韓国政府が要求し、日本政府を通して公文書などを取り寄せる仕組みにすればよかったのですが、それができず、結局、日本政府は知らなくてもいい、という状況を作ってしまいました。韓国に委員会ができたことで成果を挙げましたが、韓国側も日本の市民も未熟だったわけです」
 その弱点が裏目に出たのは、戦時中に日本で亡くなった朝鮮人の遺骨返還問題だ。この件に関する最初の日韓協議では、「人道的な立場」「未来志向」「現実主義」で遺骨問題を扱うという3原則をお互い確認しあった。
「協議に参加したのは、日本側から外務省、韓国側からは善良な市民と研究者。日本政府の思惑は、『わが国の直接的な責任ではないが、韓国から求められている遺骨問題を、人道的な立場で扱う。それによって、日韓の未来に役立つ』と都合のいいもの。でも、韓国側は善意に解釈したのだと思います。その結果、遺骨返還の際の「公式な謝罪」がずっとネックになっているのです。結果論ですが、『日本の歴史問題の解決のために遺骨問題を扱う』としていたら、違ったでしょう」
 遺骨問題を担当する人道調査室は設置されたが、「『なぜ死にいたったか』『その責任が日本政府にあったのか』は、自分たちの調べる課題ではない」というスタンスを崩さない。
 札幌在住の小林さんは、北海道の朝鮮人遺骨問題に取り組む市民団体「強制連行・強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム」でも活動している。当団体が結成されたのは、2002年に本願寺札幌別院が101体の朝鮮人、中国人の遺骨の存在を発表したのがきっかけだ。その後、赤平と室蘭の寺院に納められていた遺骨の返還、日本軍浅茅野飛行場建設時の死亡者が埋葬された共同墓地の発掘などを行ったが、解決の糸口は見つからず、前途多難でもある。
「調べてみたら、返せない遺骨のほうが多い。約2600体の遺骨情報のうち、遺族が判明しているのは50体ほどだけです」 遺族は国と企業の責任を問うが、日本側は拒否しているため、現政権下において返還は難しい。そこで、北海道フォーラムでは、「市民の手で返還」という方向に動きつつあるという。ただし、国と関係企業にも関与させるのが条件。「室蘭の遺骨返還のときは、外務副大臣が弔辞をよこしました。せめてそれぐらいはさせなくては」
 小林さんらは先ごろ、人道調査室に宛てて、「北海道の遺骨状況を把握しているか」との質問書を提出した。返答は、「お答えできません」だったそうだ。
実のところ、この史実を知る日本人はさほど多くないのが現状だ。
「教科書に記述はあっても、教える能力を有する教員は少なく、ほとんど教えられていないと思います。河野談話や村山談話では、歴史教育を約束していますが、実際には行われていません。国家公務員および地方公務員研修、教員研修など行政が管轄する研修制度のなかで、きちんとした歴史教育を定着させることが必要ですね。安倍首相は、談話を継承すると言ってしまったわけですから、それをやる義務があります」

『ヴィタル』 2013年夏号(第16号)

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by k_nikoniko | 2015-05-04 09:22 | 掲載記事(2011~)
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